Die Mörder sind unter uns (5)

この春、帝国軍では大規模な人事異動が行われ、上層部の顔ぶれが大幅に入れ替わった。ホーエンローエ退役大将の息がかかった者たちが、そろって閑職に追いやられたからである。オーベルシュタインはといえば、相変わらず人事課で後方勤務に精を出している。この銀河帝国を変革しうる者は、まだ、見いだせない。

憲兵隊はついに、サイオキシン麻薬の製造拠点を摘発することができなかった。この宇宙のどこかにあることは確かであるにもかかわらず、手がかりがつかめない。国の手が伸びつつあることを察して、巧妙に証拠を隠滅したのではないか、というのが憲兵隊本部のハウプト大佐の言であった。

 

帝国暦473年5月5日

この日、パウル・フォン・オーベルシュタインは21回目の誕生日を迎えた。妻の死以来、彼はすっかり感情を失ってしまったように見える。もともと感情表現の豊かな人間ではないが、執事夫妻にさえ心を見せない。

オーベルシュタイン自身、自分がかつて人を愛した日々があったことが信じられぬほどだ。ただ、広すぎる寝台で無意識に彼女のぬくもりを探して目覚めた朝は、ひどく物悲しい気持ちにおそわれた。

この日の朝食後、コーヒーを飲んでいたオーベルシュタインは、執事に言われるままにフランス窓から庭先に目をやった。テラスの先に背丈の低い緑の葉が帯を作り、葉の陰から小さな白い花がいくつものぞいている。

「鈴蘭マイグロックヒェンです、旦那様」

マイグロックヒェン――5月の鈴

「去年の暮れに奥様がお手植えになったものですわ。きっと、旦那様のお誕生日に咲くようにと願われて」

涙声のヘルガがエプロンで顔をおおった。

オーベルシュタインは外に出ると、花のそばに身をかがめ、人差し指で小さな鈴の一つをもてあそんだ。よく知った甘い匂いが漂っている。彼女がいつもつけていた香水の香りだった。心が少しだけ穏やかになるのが分かった。

「少し切って、お部屋にお持ちしましょうか」

「やめておこう。せっかく咲いているのだ、このままでよい」

この花は、君影草きみかげそうという異名を持つのだという。それはいかにも彼女に相応しい名であった。

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